tatylover7のブログ

文章練習

イメソンの話

「推しの子」を3巻まで読んだ。
ツッコミたいところがありつつも面白かったけど、これ読むとYOASOBIの「アイドル」の歌詞がかなり悪く思えた。
YOASOBIはいつも小説をもとにして曲を作るということをやっている。
今回も「アイドル」という曲は「推しの子」のスピンオフ短編、「45510」という小説がもとになっている。

赤坂アカ書き下ろし小説『45510』|【推しの子】|週刊ヤングジャンプ公式サイト
https://youngjump.jp/oshinoko/novel_45510/

しかしその曲が、その歌詞が、小説と漫画そのまんま過ぎるのだ。
まず作中に出てくる台詞をそのまま引用しているところが多過ぎるし、内容も小説と漫画をなぞり過ぎである。
というわけで私の「アイドル」に対する評価はかなり下がってしまった。曲単体としてはとてもよく出来ているのだけど。

 

私はオタクの、好き作品やキャラクターのイメソンを設定するという文化が好きである。これは好きな作品やキャラクターに合う曲を見つけ、イメージソングだ!と決める行為のことである。
私自身も、よくいろんな好きな作品やキャラクターに合うイメソンを探し当てては聴き入っている。
その時に私が重視するのは、作品やキャラクターに曲がそのまま合致していることではなく、しっくり重ねることができるという点である。
そのまま合致することと、しっくり重ねられることは、私にとっては違うことだ。
いわゆる公式的な曲であっても、私はそこを重視する。作品やキャラクターをそのまんま歌詞にしても、それは劣化コピーになるだけで良い曲にはならないだろう。
大事なのはその作品やキャラクターが持っている「芯」、それが表現されていることなのだと思う。「芯」が合っていれば、しっくり重ねることができるからである。
逆に言うと、「芯」が違っていては、多くの細部が合致していても、イメソンとしては不出来であろう。
たとえば具体的な例としては米津玄師の「Lemon」がある。これはドラマ「アンナチュラル」の主題歌であり、曲の内容としては作品自体に加え、登場人物の一人、「中堂系」に特に着目していると思われる曲だ。
しかしこの「Lemon」という曲は「アンナチュラル」や「中堂系」をそのまま描いたりはしていない。それらの「芯」を捉えて表現し楽曲にし、一つの傑作に昇華しているのだ。
イメソンの完成形といえばこういうことだろうと私は思う。オタクの間で米津玄師のイメソン力が崇め奉られているのも納得である。他のタイアップ曲でも「芯」の捉え方がもの凄いので。

 

というわけで、「推しの子」を読んだことで自分の中のイメソンの定義がはっきりしたなーという話でした。
とはいえ「アイドル」という曲は変わらず好きなんだけどね。「アクア」と「ルビー」の歌詞のはめ込み方はめっちゃ良いと思うし。ただイメソンとしてはちょっとなー、と思ったという話です。
あ、「推しの子」の続きはいつか読みたいです。