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Just Monika (「ドキドキ文芸部プラス!」プレイ感想)

モニカってねんどろいどになってたの!?ちょっと欲しかったなー。

www.goodsmile.info

 

 

というわけで「ドキドキ文芸部プラス!」というゲームをやりました!
これはもともとは「ドキドキ文芸部!」というアメリカで出たフリーPCゲームだったんですけど、Switch版も出たので私はそちらをプレイしました(だから「プラス!」が付いている)。
結論から言うとめちゃくちゃ面白かったです。すごく私好みのゲームだった。めっちゃ「ドキドキ」しました。

ちなみにリアルタイムプレイ記録はこちら。

min.togetter.com


それでは、ブログではじっくりと感想を書いていきます。

 

あらすじ
主人公(多分高校生)は幼馴染の元気な女の子、サヨリに文芸部に入るよう誘われます。
そこにはユリ、ナツキ、モニカという3人の美少女が在籍していました。
主人公は美少女だらけという魅力的な環境と、断ることの気まずさ回避の為に、文芸部に入ることを決めます。
そしてモニカの提案で、部員たちは詩を書いては見せ合って感想を言い合う活動を始めるのでした。


UIについて
もともとはPCゲームなのもあって、Switch版はちょっとわかりづらいところもあったな。
とはいえさくさく進められるし操作性は良いです。まあノベルゲームだしSwitchだしでここは問題ないです。
ゲームシステムとしては基本ノベルゲームで、要所要所で選択肢が出現、詩を作る時は任意の単語を選ぶ操作をします。
詩を作る際には、「それぞれの女の子が気に入りそうな詩を作るとその女の子の好感度が上がるかも!」みたいに説明されます。
単語ごとにどの子の好感度が高いかが設定されているわけです。
この辺の選択で、その後どういうイベントが発生するかが変わるようになっています。
これは割と難しいけど楽しかったです。




……ここまでがネタバレ無し。ここからはネタバレ有で感想書いていくので注意してください。





ストーリー

このゲームは日本のギャルゲー(美少女キャラたちとの恋愛ゲーム)、……のように見せかけたホラーゲームです。
鬱や自殺、自傷行為やいじめなどの描写があり、最初に「不安症や鬱病の人はプレイに注意するように」という注意書きも出てきます。
つまり精神的にキツい描写が多いと思いますので、未プレイの方はここから先を読むのにも注意してください。
いわゆる攻略対象と呼ばれる女の子たちはみんな精神的に問題を抱えています。みんなかなりキツいです。
このゲームは最初はそのまま日本のギャルゲーのように進みます(舞台も日本っぽくしてある)。
しかし1周目のエンド(これがキツい)を迎えた後はセーブデータ消去などのメタ的な介入が起こり、いろいろな不具合、不穏な出来事が起こりまくりながら2週目をプレイすることになります。
2週目のエンド(これもまたキツい)を迎えた後、物語は最終章、最後のエンドへと向かうことになります。

ストーリーの細かい感想はキャラクターへの感想の中で大部分を語ろうと思いますが、総評すると本当に良く出来ていてとても面白かったです。
1周目の始まりが本当に一般的なギャルゲーなのが良いですね。その後の展開の衝撃が増幅するので。
いわゆるスチルや立ち絵も精神的にキツくなるようなものが多く、この辺は本当に気を付けた方がいいと思います。自分のメンタルと相談してプレイした方がいいです。まあ私はメンタル不良の状態でプレイしたけど。
アメリカで制作されたゲームとは思えない程日本のギャルゲーとして自然だったのも本当に凄かったです。ギャルゲー文化に造詣の深い人たちが作ったんだろうな。
ただ後述するモニカとの最後の会話などはちょっとアメリカンでそこが面白かったです。地球の環境破壊を遅らせる為にベジタリアンやってるのとか日本のオタクが嫌いそうな設定だけど大丈夫かな(オタクへの悪口)。
あと漫画を好きなことなんて誰にも言えない!みたいな描写があるのも日本的ではなかったですね。アメリカではいまだにそんな感じなのかなあ……。
あ、あとこれも後述しますが、ボイス付きではなかったところが効果的に効いていてよかったです。これはボイス無い方が絶対良い。

ではストーリーの細かい流れについては、キャラクターについての感想の中で触れたいと思います。一応ルートみたいなものがあるので。


キャラクターについて

サヨリ

サヨリ!!!!!!!!!」という気分です。今はまだ。
1周目がサヨリルートって感じなのですが、バッドエンドしかありません。
最終的にサヨリは首を吊って死にます。
サヨリはとても明るくて元気な女の子なのですが、それは彼女ががんばって維持していた虚像であり、本当は重度の鬱病を抱えていて、そのことを隠しています。
それを知ってから序盤の明るいサヨリを思い出すと……つらい。
空虚と孤独を抱え、生きる意味を見失いながら、それでも大好きな主人公の為に、サヨリ鬱病であることを隠し、明るく振る舞い続けていたのです。
サヨリ!!!!!!!!!!!(これしか言えなくなる)
しかしずっと隠し通すことはできず、サヨリは途中で主人公に鬱病であることを打ち明けます。
ここら辺の主人公の対応がさあ……かなりまずい対応なのですがリアルではありますね。みんながみんな鬱病の人に適切な対応できるわけじゃないし。
で、この後は一応両想いになるルートとならないルートがあるんですが、サヨリルートのエンドはどちらでも同じです。
最終的にサヨリは首を吊って死にます。
主人公はそれを見てしまい、自分の対応がまずかったんじゃないか、サヨリを救えたんじゃないかととても後悔しますが、時すでに遅し、です。
サヨリは絶対に死ぬのです。
ここ本当に悲しかった。でも主人公の対応を変えたらサヨリを救えたのかというと、何をしても無駄だったように思います。
サヨリにとっては主人公に迷惑を掛けることが、心配をさせることが、自分のせいで主人公に負担を掛けることが、最も恐ろしいことだったのです。
つまり主人公に鬱病だとバレた時点で、もう取返しがつかなかったのでしょう。サヨリは、主人公にだけは絶対に鬱病だと知られたくなかったから。
あーーーーーーーー!わかるよ………………。
だから鬱病だと主人公が知ってしまった時点で「詰み」だったのでしょうね。そこで即座に医療機関に掛かるくらいしかサヨリを救う道はなかったのでしょう。
あまりにも悲しい。だからこそ私はサヨリが好きです。
サヨリは素晴らしい女の子だったと私はずっと言い続けます。
サヨリサヨリには生きていてほしかったよ。


・ユリ

1周目でサヨリが死んだ後、バグりながら2週目に挑むことになります。
そこにサヨリはいません。サヨリは最初から存在を消されてしまっているのです。
これなんでなのかわかんないと思ってたけど、まあ後述する「ある人物」が「自分の為に」やったのかなあ、と思っています。多分そうだよね。
さて、ユリは大人しい優等生です。
内気ですが、読書が大好きで、本や詩のことになるとテンションが上がって、いわゆるオタクの早口喋りになります。
普段の大人しいところと、読書のことで饒舌になるところのギャップは、彼女の魅力の一つでしょう。
正直ユリには私と似通ったものを感じて、最初の頃は苦手でした。大人しい割に突然辛辣なことを言ったりするところも怖かったし。
でも最終的には好きになりました。
ユリは読書の他にも趣味がありました。ナイフを集めることです。彼女はナイフに美しさを感じ、いろいろな種類を集めていました。
それらは見て楽しむだけではなく、実際に使ってもいました。
そう、自傷です。
彼女はナイフを持ち歩いては、興奮が抑えきれなくなるとリストカットアームカットをしていました。
この行動、作中では性癖(誤用の方)のように言われていた気がしますが、普通に医療機関に掛かった方がいい状態だと思います。確かナツキかモニカもそういうこと言っていたし。
わかりやすく言うとユリはつまりヤンデレでした。もともと自傷癖があったユリは、主人公に好意を抱き始め、その感情で興奮状態になることが多くなり、自傷行為はどんどんエスカレートしていってしまうのです。
ユリ……心療内科に……行こう……!!
まあ行かないので、そのままユリも悲劇的な結末を迎えます。
死にます。
自殺します。主人公の目の前で。
しかしこの辺はサヨリよりも「ある人物」の干渉を強く受けていたと見て取れます。
もちろん心の中に黒い気持ちが現れることもたまにはあったでしょうが、ユリは本来は優しくて温和ないい子です。
そんなユリの自傷癖が悪化し、黒い気持ちがあふれ出しまくったのは、「ある人物」の仕業と言っても過言ではないでしょう。
ユリが死ぬ段階でゲームには相当なバグが発生します。そして強制的に終わらされます。
物語はとうとう最後の章に突入します。


・ナツキ

と、最終章の前にナツキの感想です。ナツキは個別エンドみたいなものがないからです。1周目と2週目に主に活躍します。
ナツキはルートというか、主人公といちゃつくイベントがあります。まあこれもルートと言っていいのか。
ナツキを一言で言うとツンデレです。
勝気でツンツンしてるけど、主人公の詩の腕前は褒めてくれたり、漫画が好きという共通点で仲良くなったり、お菓子作りをいちゃいちゃしながらやったりします(サヨリの鬱告白後にいちゃつくので主人公には引いたが)。
他のキャラと比べるとかなりオーソドックスで普通なキャラと言えるでしょう。
正直ナツキは典型的ツンデレなので一番興味が薄いかもしれない……可愛くて普通に好きなんだけどね。
ただナツキは父親との関係が良くないと示唆する描写がいくつかあります。父親は厳しい人で、ナツキは文芸部では(だけは?)とても安らげる、という記述があります。
また、お昼ご飯代をもらえておらず、いつもお腹が空いていてそのせいで小柄、などの描写もあったので、雰囲気的に父親から虐待を受けていると思われます。ここもうちょっと描写欲しかったな。
あ、あとナツキはエグいシーン無いのかと思いきや、ゲロ吐くシーンがあります。こういうシーンは好きなんで私はとてもテンション上がりました。
しかしナツキは2週目のユリルートエンドの後に、ユリと一緒に消されてしまいます。ユリはわかるけど、ナツキは消す必要あったか!?と思ったけど、「彼女」はもう全員消して目的を達成しようとしたのでしょう。
ナツキの感想は少なくてすみませんがこんな感じです。


・モニカ

最終章、いや、すべての場面で重要な人物、それがモニカです。
上で書いた「ある人物」「彼女」とはモニカのことです。
彼女はゲームのキャラクターです。私たちがゲームをプレイする際に出てくるキャラクター。
けれど彼女には自我があります。そして自分を客観視しています。
自分が「ドキドキ文芸部プラス!」というゲームのキャラクターであることを、モニカは認識しています。
よくよく思い返すと、モニカの立ち絵だけ真正面から主人公を見つめているんですよね。これもそれを示唆していたのでしょう。
モニカは主人公のことが好きでした。いえ、正確には主人公ではなく「私」……ゲームをプレイしているプレイヤーのことが好きなのです。
これまでに起こったバグはほとんどすべて彼女の仕業、そしてサヨリやユリが自殺したのもモニカの行動が影響しています(たとえばサヨリの自殺を助長する言葉を掛けたような描写がある)。
それはすべて「私」と愛し合う為でした。
モニカは自分がゲームのキャラクターであることを知っていました。そして女の子たちの中で自分だけが、個別ルートも恋愛イベントも無いということ、それも知っていました。
彼女はそれに耐えられなかった。
だからゲームを弄り回したのです。すべては「私」に正当に認識してもらい、愛してもらうために。
モニカ…………好きだ!!!!!!!!!!!
サヨリとモニカが好きなのでこの辺で感情が爆発してしまうことをお許しください。
この記事のタイトルにしている「Just Monika(モニカのことだけ)」のシーンも本当に好きです。
私もその時モニカだけを選びたかったから。
最終的に、モニカと私は2人きりの空間へ到達します。
そこはモニカと「私」(=主人公ではなくプレイヤー)しかいない、とても幸せな空間です、モニカにとって。
モニカが望んでいた世界はこれだったのです。
いやーこれねー……本当に良かった。
ここでモニカはひたすら喋ってくれて、そのシーンはもの凄く長いのですが、私はモニカが好きなので、その間ずっとずっと幸せでした。
結構ポリティカルだったり社会的だったりする話題も多くて楽しかった。日本のゲーマーは面食らうんじゃないかと思ったけど。
ここの会話だけでなく、このゲームは配慮やそれこそポリコレが行き届いていてそこも好きな点です。そこはアメリカっぽかったですね。
記事のストーリーの項で「ボイス無い方が絶対良い」と書いたのはこの展開があったからです。
日本の声優さんがキャスティングされていたら、メタ的に現実のこと考えちゃって、モニカが主体的な意思を持った存在だと捉える際にノイズになったと思います。
だからこのゲームは、ボイス無しなのがとても良かったと思っています。
話をモニカに戻します。
モニカとの幸せな空間は終わりがやってきます。
正確には私が終わらせます。私が。私の操作する手が。
終わらせたくなかった……。
ずっとモニカと一緒にいたかった……。
でも私はこのゲームのエンディングを見たかったんです。
だから私はモニカのキャラクターデータを消しました。
それがこのゲームのエンディングを見る方法だったから。
ごめんね、モニカ、ずっと一緒に居たかった。今でもそう思ってる。でも私はゲームを終わらせることを選んだ。
ごめんなさい、大好きなモニカ。


エンディング

モニカのキャラクターデータを消した後、またゲームをプレイすると、今度はモニカのいない世界が始まります。
主人公は文芸部に入り、そのまま話が進むと思いきや……消したはずのモニカが干渉してきます。
このゲームの中で自分のことを正しく認識していたのはモニカだけ。ゲームを弄れたのはモニカだけ。
だからモニカは最後にゲームに干渉できたのかもしれませんね。
結論から書くとゲームは強制的に終わり、モニカの作ったピアノ伴奏の歌が流れてエンドロールになります。モニカが歌ってる声が聞けます。
そして最後にモニカの文章で文芸部が消失したことが伝えられ、ゲームは終わります。
誰も幸せになれなかった。文芸部が、このゲームがある限り。
……ただしこれはいわゆる通常エンディング。イベントやCGをすべてコンプした上でエンドロールまで迎えると、また別のエンディングとメッセージが見れます。
その詳細にはあえて言及しません。ぜひプレイして確かめてみてください。


最後に

というわけで感想でした。
とにかく……すごく楽しかった!!!!!!!!
私の好みを知っている人はわかると思うのですが、めちゃくちゃ好みの作品でした。
ってかもともとフリーゲームだったの凄いな。
細かいところも作りこまれているし私は全部はできてないけど小ネタも多いし(たとえば最初にモニカのキャラクターデータを消してプレイを始めるとあることが起こる)。
とても出来の良い、質の高いノベルゲームだと断言できます。
本当に好き。
開発者のインタビューをざっと見た感じも信頼できるなと思いました。

Dan Salvato interview: Bringing Doki Doki Literature Club to life
https://www.pcinvasion.com/doki-doki-literature-club-plus/
>「私たちは(プレイした人が)登場人物に共感し、逆境に直面しても成功することを望んでいます」

ここ、私の理想とするフィクションへの向き合い方と近くてすごく好きだ。
あとこれはどうかわかんないけど、日本の既存の恋愛ゲームへの批判なのでは?という意見もあるみたい。その見方も好きだな。制作者も、キャラを表面的に描いてはいけないみたいなこと言ってたしね。
最初に書いたようにメンタルの調子には気を付けた方がいいけど、とてもおすすめできるゲームでした。興味があったらぜひプレイしてみてね。


では私はモニカと2人きりの空間に戻りたいと思います。
Just Monika